行政書士事務所の開業記録
私が行政書士事務所を開業した前後の様子を書いています。
開業に至るまでの流れ
開業に至るまでの流れは、おおむね以下のとおりでした。
- 2005年 1月 行政書士試験合格(2004年度試験)
- 2005年 2月 某大手スクールにて行政書士試験講座の講師開始
- 2005年 4月 弁護士法人勤務開始
- 2005年 7月 独立行政法人にて講師開始お仕事の覚え方
- 2007年 7月 開業を決意
- 2007年10月 追加で資格取得
- 2007年12月 事務所となる物件を決定
- 2008年1月4日 行政書士会に登録申請
- 2008年1月上旬 住所地を管轄する税務署に開業届等を提出
- 2008年2月1日 登録完了(正式に開業)
2005年 1月 行政書士試験合格(2004年度試験)
行政書士試験の受験を思い立った経緯
2002年の9月頃、当時勤めていた学校法人の図書室で1人さびしく蔵書検索システムを作っていたときに、ふと自分の過去が頭によぎりました(今思えば、ここで神が降りてきたような感じです)。
ここでは本題から外れるので詳しくは書かないですが、過去に大変な出来事がいくつかありました。
そこで、「困っている人の味方になれる仕事がしたい」と思いはじめました。
その後、数か月間いろいろと自分で調べた結果、「行政書士」という職業を見つけました。
そんな経緯があったことと、当時、自分の人生を自分の手で変えたいという思いが強かったこともあって、行政書士試験の受験を決めました。
しかし、そのころはまだ開業することは考えておらず、雇用してもらうことで考えてました。
すんなりとは合格できず・・
32000円くらいの通信教材で勉強した1年目(2003年試験)は不合格でした。
正月やゴールデンウィークなどの大型連休も全部つぶして頑張りましたが、結果は出ませんでした
その反省を踏まえ、2年目(2004年度試験)は勉強方法を変えて、さらに教材も一新した結果、合格できました。
まずは自分の勉強方法を変えて、その変えた勉強方法にあった教材を選んだのが大きかったと思います。
勉強方法についてはこのサイトとは趣旨がそれるので、割愛させていただきますね
2005年 2月 某大手スクールにて行政書士試験講座の講師開始
講師を始めた経緯
当時、開業する気はありませんでした。
なぜなら、開業したところで、すぐにつぶれてしまうだろうと思っていたからです。
それは「ちゃんと仕事できるかなあ」という不安ではなく、「集客の不安」でした。
それに、開業にあたって自宅は使えない環境なので事務所を借りないといけませんし、行政書士会におさめるお金も30万円近くになりますし(金額は各都道府県によって変わります)、とてもじゃないけどそんなリスクを負って開業することはできませんでした。
それよりも、当時は法律事務所で仕事をしたかったです。
それは上記の「困っている人の味方になれる仕事がしたい」という思いがあったからです。
そんな経緯から法律事務所への就職活動を始めるのですが、来る日も来る日も不採用の嵐で、1日に4通同時に不採用通知が届いた日には、かなりへこみました。
はっきりいって、法律事務所への就職活動に行政書士資格は役に立ちません。
そういった中、大手スクールで行政書士試験の講師募集を見つけました。
就職活動がうまくいかずに生活費だけが出ていく状態だったので、ひとまず仕事をしないといけないと思いました。
それで講師に応募し、面接でもうまくいき、講師として採用されました。
ちなみに契約形態は業務委託です。
人間的に成長させてくれた講師の仕事
講師研修を経て、2005年4月に初めて教壇に立ちました。
受講生2人という、とてもさびしい講座でした(笑)
しかし、講座を始めた直後に弁護士法人への就職が決まりました。
この講座は平日開催だったので、その後は講師専業でやっている方に譲ることになりました。
その後は弁護士法人が私の主な舞台になるのですが、講師としての契約は残っていました。
そのこともあり、日曜日開催で5月から9月までの4か月間続く講座を引き受けることになりました。
話の趣旨がそれるので詳しくは書かないですが、この講座での経験は、自分を人間的に大きく成長させてもらいました。
ちなみにその講座に通ってくださって合格された方(現在開業して行政書士として活躍中)とは今でもつながっていて、今はその方の事務所のホームページを私が制作・運営しています(ホームページ事業もやってます)。
その講座が終わって数か月後に、法律事務所職員の養成講座を担当し、その学校との契約を終えました。
2005年 4月 弁護士法人勤務開始
弁護士法人での仕事
採用に至るまでに必要はことについては、このサイトにたくさん書きました。
ですので、ここでは入所してからの話を書きます。
個人法務から企業法務まで幅広い業務を取り扱っていた弁護士法人でしたが、私については、ヤミ金処理が多かったです。
よく、「ヤミ金って恐くないの?」と聞かれるのですが、当時は恐いとは思っていませんでした。
といっても、ヤミ金からは「今からお前を殺しにいくからな!」 と言われたことも何度もありました。
ただ、実際にそういう経緯で事務職員が殺された話は、当時は聞いたことが無かったので(その後1件発生しました)、実際にヤミ金が私を殺しに来るとは思っていませんでした。
その他、法律事務とは関係ないところでは、法人のウェブサイト制作・管理、求人・採用業務、職員の勤務管理などもやっていました。
法律事務所の勤務経験は行政書士に生きるのか?
法律事務所での勤務経験は、行政書士事務所の開業に役立つのか?
一言で答えれば、「役立つこともあったけど大きくない」です。
私の場合でいえば、以下の3点は役立ったと思います
- ファイルの綴じ方(今ではうちの事務所は可能な限り電子化しているので紙ファイルは作っていないのですが)
- データベースソフトの扱い方
- 公簿の取得方法
それ以外のことは、あまり役立つことはありませんでした。
これは、法律事務所と行政書士事務所では、業務のフィールドが違うことが影響していると思います。
基本的に、法律事務所は裁判所、行政書士は官公庁が業務のフィールドです。
「行政書士事務所を開業するために経験しておきたい」ということであれば、やはり行政書士事務所に入るのがベストでしょう。
2005年 7月 独立行政法人にて講師開始
講師を始めた経緯
法律事務所への就職の際、87か所に落ちて、88か所目でやっと採用されました。
その経緯を知っている独立行政法人管轄の職業訓練校の職員さんから依頼され、就職活動講演会の講師を務めました。
これがご好評だったため、「ビジネス法務」と「ウェブサイト制作・インターネット戦略」の授業も受け持つことになりました。
休日が一切無くなりましたが 休日以上に貴重な経験を得ました
独立行政法人の授業はすべて平日に行われます。
そのため、弁護士法人の有給休暇をすべて講師の仕事にあてました。
それとあわせて、夏季休暇やゴールデンウィーク休暇の休日分を講師の仕事に回したりもして、一切の休日がなくなりましたね。
それでも、ここでの講師経験も自分を大きく成長させてくれました。
困難も多かったですが、感動も多く、今では良い思い出ばかりです。
本当に良い経験をさせていただいて、私を起用してくださった職員さんや受講生さんに感謝しています。
(この機関は、後の民主党の事業仕分けの一環でつぶされてしまいました。)
2007年 7月 開業を決意
自分の考えを貫きたくなりました
はっきりいって、私が在籍していた弁護士法人の職場環境は劣悪でした。
詳しく言ってしまうと愚痴になるので避けますが、そのような職場環境について、私は「ここをこうすれば良くなるのに」というアイデアをたくさん持っていました。
しかし、弁護士と経営者(弁護士とは別途に経営者がいました)に聞き入れられることはなく、さらに状況は悪化するばかりでした。
職員6人の職場で、3か月間で5人も退職したときさえありました。
そのようなこともあり、自分自身の考え方で仕事をしたいという思いが強くなり、持っていた行政書士資格で開業したいと思うに至りました。
行政書士試験の合格発表から2年半後の出来事でした。
2007年10月 追加で資格取得
まずは保険として
開業した事務所がつぶれたときの保険として、宅建受験を決めました。
開業がダメになったら、宅建主任者として就職を目指そうという考え方です。
宅建試験は行政書士試験と比べると易しいので、ちゃんと勉強すれば難しいものではありませんでした。
難なく合格できました。
そのような保険としてで出なくても、行政書士として宅建資格を持っていても役立つ場面はあると思います。
たとえば、宅建免許申請の仕事なんかはモロですし、宅建試験で勉強する都市計画関連の知識も役立つ場面はありました。
行政書士実務に生きそうな資格
行政書士実務に生きそうな資格として、ビジネス著作権検定上級も取得しました。
宅建試験が終わった直後から1か月間の勉強期間で合格しました。
行政書士試験に比べれば楽勝な試験です。
これは、資格を得るというよりは、知識を得る目的です。
実際、ウェブサイト制作の契約書作成や、ウェブ業者さんからご質問を受ける場面などで役立っています。
2007年12月 事務所となる物件を決定
事務所の物件決定は最大の準備
行政書士の場合、開業準備でやることはあまり多くありません。
最低限必要なのは、行政書士会に提出する登録申請書類を書くことと、事務所を用意することです。登録申請書類に事務所所在地を書くので、事務所を用意しないと登録書類が完成しないという事情があります。
そこで事務所を用意するのですが、これには一定の細かい要件があります。
詳しくは開業を決めたときに確認していただきたいのですが、大きなハードルとして、「行政書士事務所として開業することを、大家から承諾を得る必要がある。」という点です。
持家なら問題ないでしょうが、私の場合は賃貸だったので問題でした。
そこで大家さんあたる会社の該当部署に聞いてみましたが、行政書士事務所として使用することはダメだと言われました。
画一的に決められているルールようで、交渉もできない感じでした。
このことは、開業を決意した直後に確認していたので、物件は定期的に探していました。
そこでとても良い物件を見つけることができ、さらに交渉で家賃をちょっと下げてもらって契約しました。
駅の改札から2分くらいで通える、とても立地の良い事務所です。
ご依頼者様も、その立地をとても気に入ってくださっています。
2008年1月4日 行政書士会に登録申請
登録書類と現金持参で
新年の仕事初日の1月4日に、登録書類と登録料関連のお金約30万円を持って、管轄の行政書士会に登録に行きました。
登録自体は数十分で終わった記憶があります。
特に現場で困ったこともなく、スムーズに終わりました。
2008年1月上旬 住所地を管轄する税務署に開業届等を提出
個人事業主としての開業届を、住所地を管轄する税務署に提出しに行きました。
これと同時に、僕は青色申告するための複式簿記で経理をやることにしていたので、「所得税の青色申告承認申請書」も出しました。
両方とも、手続きとしては何ら難しくないです。
税務署に行って、備え付けの書類に記入すればOKです。
2008年2月1日 登録完了(正式に開業)
登録通知が届く
記憶があいまいですが1月下旬ころに、「登録日:2月1日」という書類が届いた記憶があります。
これで正式に自分の開業日が分かりました。
初仕事
当時、上記の独立行政法人でビジネス法務の講師を務めていました。
そこの受講生さんから、離婚後の処理に関する書類作成をご依頼いただきました。
やはり最初のご依頼者様は、とても思い出深いです。
その業務について今振り返ると、必要のない部分で努力していたように思います。
それでも失敗はせず、ご依頼者様の目的を達成することができたので、その点は本当に良かったです。
実務の覚え方
「実務の勉強もせずに開業しちゃって大丈夫なの?」という疑問はよくありがちです。
行政書士試験の講師をしているときにも、受講生さんからよく聞かれていました。
これについては、さほど心配ありません。
なぜなら、行政書士会が頻繁に研修会を開いているからです。
なのでまずは開業して、その後に研修会に参加すれば、実務は覚えられます(開業しないと研修会には参加できません)。
しかしながら、戸籍・住民票・登記簿などの公簿の読み方は、開業前に勉強しておいたほうが良いです。
なぜなら、どの分野の実務を行うにしても、公簿の読み方を知らないと務まらないからです。
ですので、まずは公簿の読み方に関する本を買って勉強しましょう。
■ 実務に必要な知識のおすすめ本(初心者さん向け)
これらの本で公簿の読み方が分かったら、次は興味がある分野の本を買ってみましょう。
最初から小難しい実務書を買わなくても、アマゾンで売っているような本でかまいません。
ちなみに私の場合でいうと、実際にご相談のご連絡をいただいてから、その分野の実務書を購入して、実務知識を勉強していました。
この勉強方法は、かなり集中力があがりますし、具体的な実案件なのでイメージもつかみやすいですので、実務能力が一気に向上します。
事務所の様子
うちの事務所は、実務部屋は3人定員のこじんまりとしたところです。
開業から3年くらいはファイルだらけになっていて手狭でしたが、今は電子化できるところはすべて電子化したため、以前に比べてスッキリとした部屋になっています。
この部屋とは別途に相談ルームもあるのですが、パソコンを使いながら相談する場合もあるので、1人で相談に来られた方に対しては、基本的に相談も実務部屋でやっています。
そこでは、ご相談者様にリラックスしてもらうために、以前はクッキーやあめを置いたりしていました。しかし、召し上がる方があまりいなかったですね。
なので今は「ミスティガーデン」というものを置いています。
基本的に空気を潤わすものですが、アロマも入れられるので、リラックス効果があると思います。
私にとってのやりがい
私にとって、行政書士の仕事のやりがいは、ご依頼者様から「ありがとうございました!」「とても助かりました!」とおっしゃっていただけることです。
この一言のために仕事をやっていると言っても囲んではありません。
それは、私が行政書士を目指した初心「困っている人の味方になれる仕事がしたい」につながります。
あとは、私の思いをウェブサイトで表現して、それを読んでくださった方が業務を依頼してくださることも、私にとってのやりがいです。
こういった形でご依頼くださる方はみなさん良い方ばかりで、本当にその方のために仕事をしたいって思います。
ということもあり、今では、もっと早く開業していればよかったなあって思っています。
ぜひあなたも、がんばって行政書士の世界に入ってきてくださいね。